ただの物語

艨ィカルマの坂←
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ある時代。
ある場所。

この乱れた世の中にある小さな村の、少年の物語。



少年は生きるために盗みを生業としていた。

「ま、待て待てぇえ!」
店主は醜く太った大人。

「遅いよ…。」
少年は風のような速さで逃げる。
大人には決して追いつけない。

少年は逃げる途中思う。
今は空腹をみたすのが全てなんだよ…。




是も非も越え、ただ走った。
少年に罪の意識はない。
少年にとっては盗みは日常。


心は清らかなまま保っていた。

「あ〜あ…。天国も地獄も…。ここよりマシなら喜んでいくのになぁ…。」


この世界。むしろ死んだ方が楽、というときもある。

それだけ腐った場所だ。


少年には嫌いな言葉がある。


[人は皆、平等]



んな訳あるかよ。
一体どこのペテン師のセリフだよ。

少年は信じなかった。

人は格差、格差だ!



「あー…だり。」
少年は空を仰いだ。















************************












ある日、少年はいつものようにパンを抱いてにげていた。

今日はフランスパンか…。上出来だ。
よだれがでそうになるのを止める。


その時。
向こうから行列。


すれ違う。



少年は立ち尽くしてしまった。

何故なら、行列の中に美しい少女がいたからだ。




「かわいそうに…。」

遠い町から売られてきたんだろうな…。

少女の瞳には涙がみえる。
この腐れた世の中だからな…仕方ない…のかな。


その少女は、金持ちの家を見届けたあと、叫びながら走っていった。

「……………。」
少年は追い掛けた。












「待てよ…!」
「な、何!?」
「フランスパンやるよ…落ち着け。」

少年はさしだした。

「う…うん。」




「お前…。売られたのか。」
「うん…。金欲しかったみたい。」「そっか……。」
「高く売れたみたいだよ…。よかったよかった。」
少女は悲しそうに笑った。
どうにかして救えないか…。
結局、少女には思想も与えられなかった。



売られた家を聞き、別れた。


「神様が……神様がいるとしたら何故僕らだけ愛してくれないんだよ…!」


少年は計画を思いついた。「やってやんよ…!」
少年の口元が醜く歪んだ。









この村は、坂の村だ。
全体的に坂だ。


少女が売られた家はその坂の頂上にある。



この村のもっとも下には…

村宝、名刀[正宗]がある。

非常に重たい。


日頃は監視員がいるが、夕暮れにはいなくなる。


少年はこの時を狙った。

正宗を盗んだ。


重たい刀を引きずる。

あの家を目指して。





この時の少年の姿。
重たい刀を引きずる姿は
大人から逃げていた時の
風のような姿と呼ぶには
悲しすぎよう。




少年はカルマ[因縁]の坂をのぼる。





「ついたぜ…。」
目の前には家。


「警備員!しねぇ!」
正宗をふりかざす。


「お前は…!?さらにそれは正…!」

言い終わる前に斬る。


「へへ…!さすが名刀…」

少年は侵入した。




[侵入者だ――…。]

















少年は最後の部屋に。
ここに少女が…。



周りには死体が転がっている。
「ははは…やったぜ…。」怒りと憎しみがこびりついた刀を落とす。








少年は部屋を開けた。

「おい…!」












そこに確かに少女はいた。「アハハハハ…。」

「どうした??」

「アハハ…。」

「お前…………もう…。」




少年は悟った。






もう



魂がこわされている。


「…………………。」


少年は部屋を出る。

刀をまた、拾う。












「これで…いいよな??」


少女に向かって刀をふりかざした。












最後の一振りを少女に。







泣くことも忘れてた。





ただ、空腹は思い出していた。







痛みなら少年もありのままを確かに感じていた。













お話は

ここで終わり。


ある時代の
ある場所の
物語―――――――――…

















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