ただの物語

艨ィ扉T←
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   *プロローグ*

夕凪[ゆうな]は荒野を歩いていた。
頬はやつれ目も虚ろ。


何の感情もないのに涙が伝う。

その時、目の前に数人の影が。
夕凪は事態を理解できない。
目の前の影も同じだ。
戸惑っている。

一体何なのだ…。
そういえば、おかしかった。
始まりからおかしかったのだ。






あれは12月の寒い日。
夜、友達数人と居酒屋的な所で騒いでいた。



そのメンバー。

千佳
竜彦
友一
未紀
正太郎
清隆
真子



友達になった時期はバラバラだが、まぁ、友達。

しかし、竜彦はわがまま横暴だから、消えてもいいと思っている。


今回の集まりでも、店員に暴言を吐いたりして、なんかイヤな空気で解散に。


「どうする!?二次会いく!?」
「いや…。終電なくなるしいいや。」
「あ…俺も。」
「なんだよ…たく…。」
「じゃあ今日は解散な。」「バイバイ。」



さぁて…と。
夕凪が帰ろうとしたとき。「…雨。」

それからの記憶が、ない。











   [第一の扉]


目をさました時、そこはベッドの上ではなかった。
コンクリートの上…??

辺りを見ると、真四角のコンクリート部屋。
しかもあの友達達もいる。
「お、起きてよ!」
他のみんなをおこす。

「うぅん…。…。ここは!?」
「知らない…。記憶が…ないの。」
解散して、雨が降ってからの記憶がない。
なんらかの事件に巻き込まれたか??
まさか拉致!?

そんなこんなでみんな起きた。
みんな記憶がなく、夕凪と同じ状況らしい。

「そうだ携帯!」
携帯…。なるほど。
「ダメだ…電源がはいらない。」
夕凪もそうだった。


改めて部屋を見る。
扉がある。
…扉??
扉があるなら扉から出ればいいじゃない。

「竜彦、扉あけてみて。」「すでにやってるに決まってんだろ!お前はむしけらか!」
こいつ…!
「なら…扉の反対側にあるスイッチには気付いたかしら??」
言うと竜彦は焦った表情をみせた。「あ…当たり前だろ!」
嘘臭い。絶対に気付いてなかった。スイッチは壁と同色で目をこらさないと見つけられない。
夕凪だからこそ気付いたとでもいう所か。
「いまから押すんだよ。」竜彦はスイッチをおした。
瞬間、カチっと扉から音がした。
「開いた系じゃねーの!?」
みんなが扉にあつまる。
「ダメだ…あいてねぇ。」「確かに開いた感じはしたのにな。」
その時、清隆が何か気付いたようだ。
「ま、まさか…。」
清隆はスイッチを押す。
「あけてみてくれ。」


「オォ!あいたぞ!」
やはりか…清隆は思い、スイッチを離した。瞬間。
扉が勢いよくしまった。
「な…なんだこれ!?」

清隆は説明。
「簡単だよ。スイッチをおしている間だけ扉はひらく。」

みんな一瞬ポカーンとした。
が、意味を理解し、絶句。「1人が犠牲になれってのかよ…!」
「くそが…!」
みなが絶望の縁にたたされている。
だが夕凪は言った。
「待ってよ!まだそうと決まった訳じゃない。警察とかも動くでしょ!助けを待っていよーよ!」
希望。この時、まだ夕凪の胸には希望があった。「そう…だな。わかった。」


みんなが、腰を下ろした時だった。
「うわッ!」
スイッチのすぐ隣に座っていた清隆が小さく叫んだ。
見れば、水が清隆をぬらしている。
一体どこから…!?

「あ、穴だ!」
なんとスイッチの横にある穴から水が吹き出してきた。
「んだよこれ…!」
水。水。

しばらくすると膝らへんまでたまってきた。


「このままじゃ…!」

みんながパニクる。
「もういい…!」
清隆がいった。
「いいって…??」
「俺がここに残ってやんよ。」
その言葉にみんな驚いた。「そんな清隆…!」
「このままじゃあ、みんな死んじゃうだろ??だったら1人が犠牲になった方がいい。」
「でも…でも…!」

そんなこんなしている内、ついに胸の辺りまでたまってきた。
「はやくいけ!」
「…仕方ない!行くぞ。」竜彦が言った。
扉を開ける。
水が扉の外に出る。
扉の外には、狭い廊下があり、その先にまた扉がある、といった造りだ。
廊下に水がたまりだす。
「竜彦…!」
「あぁ??そいつは自ら犠牲になるって言ってんだ。素直に従おうぜ。」
「く…。」
なんだこいつは…。
友達じゃなかったの…??
「それに、清隆のいうとおり、これじゃ全員溺死だぜ??」
確かに。
「ほら…竜彦も言ってる。俺の事には構わず先に行けよ。」
こんな所で清隆とお別れ??
「もういい。行くぞ。」
正太郎が言う。
「そんな…!」
「うるせぇ!行くぞ!」
腕を引っ張られた。
抵抗できない。無理矢理扉の外へ。
「清隆ー!」
最後に清隆は微笑むと、スイッチを離した。















「清隆………。」
部屋の方を見て嘆く。
「仕方……なかったんだよ。」
仕方ない。ほんとにそうか。もしかしたら生きれたかもしれない。
「次…行くぞ。」












清隆はこれでいいと思っていた。
水はもう下唇まできていたが、背伸びはしなかった。今までの思い出が駆け巡る。


扉のノブに捕まる。
しかし体は正直だった。





清隆の強く握った拳が力なく開き、体が浮くのは数分後だった。













   [第2の扉]




「清隆は犠牲になった…。それを無駄にしないためにも、行くんだ。」

この扉の先にあるのは未来か絶望か。
とにかく行くしかないのは事実。

「扉の真ん中に[T]って書いてる。なんだろ??」
「多分ー…。[助けて][血がでる][つまらない][てめぇ][止めて]などのTじゃないかな。」


まさか…。

「とにかく、開けるからな。」

ギィー…っと開く。その先を見た夕凪は絶句。
またしても同じような部屋がある。
竜彦が先に中にはいる。

「おいおい…。また、スイッチと穴がありますよ〜。」
竜彦がわざとらしく言った。
「まじかよ…。」




みんな、わかっていた。
また、犠牲が出ると―――――――!



だがしばらくしても、水は出ない。

「何でだぁ…??」
正太郎が穴に近づく。
「うっ!」
正太郎がのけぞった。
「どうした!?」

「ガスが噴出してやがる…!」




ガス…!?
水の次はガスなの…??




「私が、犠牲になろっか。」
「千佳…!」

自分から犠牲に??

「なんで…!」
「もう清隆くんも死んだしさ。誰が死んでもよくない??」

千佳も精神がやられたか??
「はやく…このままじゃ全滅だよ??」
千佳はスイッチを押した。
「はぁ…はぁ…。脱出するぞ。意識もたねぇ。」
竜彦がいち早く脱出。


みんな出ていき、夕凪だけが残った。

「はやく夕凪も。」
「いや…いや…。」

「夕凪!こっちへ!」
友一が呼ぶ。


「友一くん…。夕凪を連れてって。」
「あぁ…。」

友一は無理矢理、夕凪の腕をつかんだ。


「やめてぇ!」


だが男の力にはかなわない。
簡単に部屋の外へ。

「じゃあね…。夕凪…。」千佳は、スイッチをはなした。



薄れゆく意識の中、身体の機能が壊されていくのがわかった。
そのまま、床に倒れた。






   [第3の扉]




「千佳…!」
夕凪はくやしがっていた。千佳とは一番仲よかったとおもう。
その千佳が死ぬなんて…。

「…次の部屋へいこう。2人の無念を晴らすんだ。」正太郎は扉へ。

「…………。」
「いこう。」


次の扉を開けた―――――。




そこには澄んだ青空はうつらない。
また、部屋。

だが、違う所があった。


「スイッチと…穴が…ない??」
「まじだ…。どうやって脱出すんだ…??」


「まさか…長期戦じゃねぇよな??」
竜彦に視線がそそがれる。
「どういう事だよ??」
「もう、みんなで脱出なんて生ぬるい事言ってらんねぇ。必ず誰かが死ぬだろ??」
「…………。」
「何もない以上、誰かの餓死を待てって事だ。」
「そんな…。」

みんなが絶望。
が、その時、事は起こった。
扉がひらいた。
「え??」


一瞬の希望。
だがそこから何か入ってきた。
「お、男の子…??」
小学生くらいか、男の子が入ってきた。


そいつは、1人1人の顔をなめまわすように見た後、目を閉じ、完全に動かなくなった。

「な、なんだぁ??」
「わからない…。」


ここにきて、真子が動きだした。
「僕…どうしたのかな??」

男の子に話しだした。
そういや、小学校の先生になりたいって言ってたっけ。

「何か話して??」
依然として無反応。

真子は男の子の肩に触れた。
「ひぃッ!」
真子はちょっと後ろへ。



「どうしたの??」
「か、体が硬い…!まるで、ロボットみたいな…!」その時。
男の子がついに目を見開いた。
そうかと思うと、真子に飛びかかった。
首をしめだした。

「たすけ…!」
みんな、助けようにも一歩が踏みだせない。


ついに真子は倒れて動かなくなった。


「……真子??」
近づこうとした時、みんな吹っ飛んだ。
なぜなら、つよい発光と爆風が起きたからだ。












「うぅん。」
目を覚ます。
「どうなった??」
周りは白煙だらけ。


手に何かが触れた。これは…??


「ひいいぃ!」
夕凪は思わず、それを投げた。
それは肉片。
目の前には、体のなくなった真子がいた。
あの男の子が爆発した…。
触れたら、爆発する仕掛けだったんだ…。




夕凪は思わず吐きそうになる。



「イヤ…イヤアァァァァ!」

悲鳴だけがこだました…。













続く
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