ただの物語

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気づくと、木造建築と思われる建物の一室――――壁の材質からそう判断したのだが。イヌマルックはベッドで目をさました。

隣のベッドにはエフタルがまだ横たわっている。






―――GAMEOVER……。






そんな声が聞こえた。

「アガサ…!」


声の主は、目の前に座っていたアガサであった。


「なにがゲームオーバーだ…!…話してもらおうか!お前の正体と…!エフタルの記憶が無い訳もな。お前の仕業って分かってんだよ!」


イヌマルックが一息で言うと、アガサはまたあのイヤな笑みを見せた。


{するどいねぇ…!さすがイヌマルック。全てを話してやろう。}


アガサは静かに口をひらいた…。
{お前等は“アポトキシン4869”という毒薬を知っているか……?}
「あの……体は子供、頭脳は大人の名探偵の漫画に登場する……!?」
{そうではない。 名前は同じだが、それだけだ。 効果なども異なる。 決して小さくなったりはしない。 そして、決してパクリではない。}
『その薬がどうした……!』
{通称“黒組織”と呼ばれる組織がある……。 私はその組織のボスであり、その薬を作らせたのも私だ……!}


「なるほどな……。 そして、その薬は“記憶を喪失させることが出来る”……! さらに、エフタルにそれを飲ませやがった……!! そうだろ……? 黒組織のボスさんよぉッ!!」
{…そういう事だ。}

イヌマルックは膝から崩れ落ちた。

「黒組織のボス…。そんなのに勝てる訳ないじゃん…!」

{あはは♪物分かりいいね!ごほうびをあげよう。}

「ごほうびぃ??」
{あぁ。エフタルの記憶を戻らせる事の出来る方法だ。教えてやる。}


イヌマルックは顔をあげた。

「なんだ!?」
{実はこの町に…。【記憶】の錬金術師がいるんだ。会ってみるといい。}





イヌマルックはアガサに教えられた場所に赴いた。
ちなみに、エフタルはついてきていない。
アガサと話があるらしい。
待ち合わせ場所である、寂れた駅に一角。
そこには、一人の男が居た。
そいつは、錬金術師というよりはまるで“奇術師”のような……。
そんな印象だった。
「あんたが……記憶の錬金術師か。」
【やあ……。よく来たな。 そのとおりだよ。 ……それで?“記憶の錬金術師”……つまり、私。 パルピイ・メルニアに用というのは……?】



「パルピイ…??」





何か、どこかで聞いた事のある名前のような気がする。
思い出そうとするが、肝心な所で霞がかってしまう…。
イヌマルックは思い出すのを止めた。


「仲間を…!仲間の記憶を戻したいんだ…!」
【その仲間は、なぜ記憶がなくなった??】
パルピイはすぐ言った。

「なんかの薬のまされて…。」
いうと、パルピイはため息をついた。

【またそれか…。最近、それが増えてんだよな…。あー、めんどくせ…。】

とてもけだるそうなパルピイ。
【ていうかさー。 人に頼み事があるならなんか差し入れとか持って来いよ。】
「差し入れと言われても、何を……?」
【はあ……。 決まってんだろ?】
パルピイはあきれたような顔をして、さも当然のように言う。
【神羅万象チョコだよ。】
そして、パルピイは念を押すように続ける。
【ムシキングや恐竜キングは時代遅れ……! 時代は、神羅万象チョコなんだよ!】
「……そうか。 思い出したぞ……! 昔……妙な差し入れを必要とする錬金術師が居たって……!」
【おいおい、妙ってのは失礼だろ?】
イヌマルックはパルピイの文句を聞き流す。




「じゃあ……! あんた、もしかして……あの“パルピイ・ゴーピー”の孫か……ッ!?」
パルピイは含み笑いを浮かべて答える。
【……ご名答。 あんた錬金術師よりも探偵の方があってんじゃねーか……? あんたの推測のとおり……。 俺は、パルピイ・ゴーピーの孫、さ。】

「あいつの…孫…!」
【あぁ…。】

そうとわかれば、早速買いにいこう!
イヌマルックは飛び出した。

【行動力のあるやつだ…!】




店についたイヌマルック。
「…!そういや、何買うんだっけ??」
イヌマルックはどわすれしてしまった。
「確か、なんかのチョコ…。」
悩んだ末、一つのチョコを手にとった――――――。







【帰ってきたね。】
「ほら…これだろ??」

差し出す。


【ちょ…おまッ………!】
【いやいや……!どうやったらあれとこれを間違えて買ってくるんだよ!】
「え?間違っていたか?」
【当たり前だろ! これは……!】

メルニアは一拍おいて言った。

【それ…!ビックリマンチョコじゃねぇか!】


「こっちじゃなかったんかーい!」

【神羅万象チョコとは全くの別物だ!】
「ええ〜?だって違いがわからねえよ。」

【全然違うだろうが!とにかくもう一回行ってこい!】
「仕方ねえなあ……。」
イヌマルックは嘆息し、再び店に向かう。

イヌマルックは衝撃の事実を知る。
店員から言われた一言。




それ、売り切れ――――――。



「どうするかな……。」
イヌマルックは何か大事なことを忘れているような気がしていた。
「あ……っ! そういや俺錬金術師じゃねーか! 練成すればいいじゃん! 生命の錬金術師とか銘打っておきながら一回も練成してないから忘れてたぜ!」

チョコを錬成…
どうやってやる??

そもそも…チョコじゃなくてシールが必要なんじゃないのか…?


そんなこんなしてると、店員が走ってきた。


店員「在庫あったよ!」

イヌマルック「やりぃ!」


なんとか、例の物を入手できました。
「全く…。一時はどうなるかと思ったぜ。」
「ほら、買ってきたぞ。」
イヌマルックがパルピイにチョコレートを渡す。
【やっとかよ…。 チョコ買うだけなのにいつまでグダグダやってんだよ。】
パルピイがあきれながらもチョコを受け取り、開封する。
【な…! まさか……! このカードは……!】
【雷光王リュウガ…!】




「りゅーが??なにそれ。」イヌマルックは、そのカードを見る。

【ちょwwwおまwwwなんて激レアカードあててんだよw】

「そうなの??」
確かに、リュウガはかなり凄そうな姿や雰囲気をしている。

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